Vol.185

加飾と電磁波シールド機能の両立

電磁波シールド用インキ (導電インキ)のご紹介

加飾と電磁波シールドの両立による工程削減・機能性向上をお考えのお客様にお知らせです!

加飾工程の中で電磁波シールド機能を付与することが可能です。
電子機器のEMC対策(ノイズの放出・侵入に対する対策)の強化・コスト削減に貢献します。

1. 電磁波シールドの仕組み

電磁波シールド材の入射電磁波を遮断する原理

電磁波シールド材は、主に2つの原理を利用して入射電磁波を遮断します。 一つは、表面で入射電磁波を反射する反射損失です。
もう一つは、シールド材内部で入射電磁波を減衰させる吸収損失になります。 この吸収損失は、入射電磁波がシールド材を通過する際に発生する渦電流による 入射電磁波を打ち消す反発磁界による損失と渦電流自身が生む熱による損失となります。

なお、正確にはシールド材内部で電磁波が反射を繰り返す多重反射も発生しますが、 通常は値が小さく無視できます。

電磁波シールドの仕組み
原理 原理の詳細 関係する変数
反射損失 シールド材表面と空間の境界面で発生する反射による損失 シールド材の厚さは関係なく、シールド材の導電率
吸収損失 電磁波がシールド材を通過する時に発生する渦電流による反発磁界と熱による損失 電磁波の周波数、シールド材の厚さ・透磁率・導電率
多重反射 電磁波がシールド材内部を多重反射する現象。 一部はシールド材を通過し損失効果を下げる 通常は値が小さく無視できる
 
 

2. 電磁波シールド用インキ(導電インキ)

電磁波シールド用インキの仕組み

電磁波シールド用インキとは、導電機能を持つことで前述の電磁波シールド機能を実現したインキになります。
このインキにより、電子機器内部で発生する電磁波の漏洩や外部電磁波の侵入の低減が可能になります。

電磁波シールド用インキは、印刷によりシールド機能を付与するために、自由度が高く、 加飾との両立が可能で導入も容易です。
更に、他の手法からの代替により工程削減・軽量化・薄型化などにも貢献します(詳細後述)。

 

電磁波シールド用インキの仕組み

電磁波シールド用インキの優れた特徴

優れた機能性 詳細
安価でシンプルな工程
  • 他の電磁波シールド技術と比較して、印刷という簡便な工程で機能の付与が可能
  • 工数もあまり増えず、重量・厚み増を気にせず、シールド機能の付与が可能
シールド機能と加飾性の両立
  • 電磁波シールド用インキの対応色では加飾とシールド機能の付与を同時に実現
  • 対応出来ない色でも加飾インキとの重ね印刷で自由にシールド機能と両立可能
印刷パターン・膜厚の自由な調整
  • 機器内部に合わせて、ベタ・パターン・膜厚など自由に調整が可能
  • 格子パターンによりディスプレイ等の光の透過が必要な部材にも対応が可能
湿度に強く少ない経時劣化
  • 金属箔・金属の蒸着等と比較して湿度に強く、経時での性能劣化も少ない
静電気対策への応用も可能
  • 他の導電材料に無い表面抵抗値(2000Ω)のインキも設定可能(後述)
  • 静電気・帯電による障害防止に応用が可能
 

電磁波シールド用インキの活用分野

現在の電子機器は、ノイズの放出(EMIまたはエミッション)とノイズの侵入による誤動作防止(EMSまたはイミュニティ)の2つについての対策、つまりEMC対策(EMI対策+EMS対策)が、厳しく求められています。

しかし、電子機器の小型化・高性能化とそれに伴う利用場面の増加から、一つの絶対的な対策でノイズ問題を解決するのではなく、複数の対策の積算により解決する方向に変わりつつあります。

そうした中、この電磁波シールド用インキは、比較的容易にEMC対策の補強を実現する絶好の技術となっています。

活用分野 得られる効果
タッチパネル
  • タッチパネルに格子状への印刷。視認性とシールド機能の強化を両立
  • 窓枠へのベタ印刷。加飾工程にシールド効果を付与
電子機器の筐体
  • 加飾工程に最低限の追加工数でシールド機能の補強が可能
電子機器の静電気対策
  • 他の導電材料には無い電気抵抗値(表面抵抗値2000Ω)にも対応
  • 静電気対策・帯電防止対策が必要な電子機器に応用可能
 

3. 電磁波シールド用インキの基本性能値

電磁波シールド用インキの導電性能

電磁波シールド用インキを推奨条件で印刷した際の膜厚値と表面抵抗値の参考値は以下の通りです。

インキ品名 表面抵抗値 膜厚 対応基材
MRX-HF 00127 TAU DS 茶   ≤ 1Ω 14µm PET、PCなど
MRX-HF 00127 TAU DS グレー   ≤ 200Ω 14µm 同上
MRX-HF 00127 TAU DS 墨   ≤ 2000Ω 10µm 同上
GLS-HF 00127 TAU DS グレー   ≤ 10Ω 10µm ガラス、ポリアミド
GLS-HF 00127 TAU DS 墨   ≤ 2000Ω 8µm 同上
 

電磁波シールド用インキの電界に対するシールド効果

MRX-HF 00127 DS の電界に対するシールド効果は以下の通りです。 (原反:PC、ベタ印刷の膜厚:茶・グレー 14µm、墨 10µm)
なお、多層印刷による膜厚調整・部分印刷等も可能のため、より複雑なシールド効果の調整が可能です。

電磁波シールド用インキの電界に対するシールド効果

 

他社製品とのシールド効果の比較

MRX-HF 00127 DS 茶と他社製品、 銀銅系のシールド用塗料と銅を使用したシールド用メッシュシートの比較になります。
(注:周波数表示は、高周波を比較するために線形表示になっています。 (上記の墨・グレーとの比較では対数表示))
MRX-HF 00127 DS 茶は、一層印刷の膜厚14µmにも拘わらず、高周波領域で同等以上の効果を発揮しています。

他社製品とのシールド効果の比較

4. 電磁波シールド用インキの活用事例

電磁波シールド用インキのベタ印刷の事例

GLS-HF 00127 TAU DS 墨・グレーの印刷例(原反:ガラス)になります。 これらは単体で美しい黒・グレー色を実現するため、同色の加飾用インキの切り替えのみでシールド機能や静電気対策機能を付与することが可能です。

電磁波シールド用インキのベタ印刷の事例(1)

 

MRX-HF 00127 TAU DS 墨・グレー・茶の印刷例(原反:PC)です。 これらは多層刷りも可能なことから、シールド効果の高いMRX-HF 00127 TAU DS 茶を利用して、シールド機能とデザイン性の2つを追求することも可能です。

電磁波シールド用インキのベタ印刷の事例(2)

 

電磁波シールドと他の機能との両立例(ディスプレイへの応用)

MRX-HF 00127 TAU DS 墨の電磁波シールド機能と 光の透過を両立するディスプレイへの応用例(原反:PC)になります。
電磁波シールド用インキは、印刷の持つ自由度の高さから、細かい調整が必要な特殊部材への応用で力を発揮します。

電磁波シールドと他の機能との両立例(ディスプレイへの応用)